前回に引き続き、漢方をやってて良かったと思える瞬間をご報告します。
地方の総合病院で<何でも外来>を担当しています。
総合診療科
他の科で解決しなかった患者様の依頼があります。
80代の男性:
「夜になるとお腹がシクシクして眠れない。胃腸科で繰り返し検査してもらうが異常がないと言われる。」
80代の女性:
「緑内障で失明し、現在目を開けていても光も感じません。暗い世界です。それなのに、頭の中に沢山のカラーの景色が出てきて煩いんです。どうにかしたいんです。いろいろな科に行きましたが、解決できないと言われました。」
私としては、このようなご相談はラッキーです。
西洋医学的には、心配な疾患は全部否定されているからです。
お話しをゆっくりお聞きします。(問診)
いつからその症状は起こりましたか?
その症状が起きた時の環境(家族関係や人間関係、冠婚葬祭などのイベントなどを含む)はどうでしたか?
話を聞いてもらえる、取り合ってもらえるんだと感じてくださり、安心して話してくれます。
実は、この問診の中に、原因や解決へのヒントが隠れていることが多いんです。
二人のお話しからには、<不安>が隠れていました。
男性は、早くに妻に先立たれ、無職の独身の息子さんと二人暮らし。
女性は、頼りにしていた姪御さんに末期癌が見つかり、あっと言う間に亡くなってさみしかったそうです。
まずは、患者さん本人にも、原因やキッカケに気づいてもらいます。
私の方は、不安を緩和することで有名な漢方薬を出しました。
2週間後の再診時、
男性:「あれを飲み始めて2日目には、夜のお腹のシクシクがほとんどなくなった」
女性:「頭の中のカラフルなイメージは今もあります。でも、気にしないようになりました」
と報告してくれました。
お二人に処方したのは、同じ漢方薬(同じ名前)でした。
男性のお腹の痛みに効果がありました。女性の頭の中の煩わしさにも効果がありました。
『異病同治』の一例です。
お二人の訴えを<心身一如>、全人的、全体的に捉えた時に、<この漢方薬が当てはまる人>と判断したからです。
心身の不調とともに、環境との関連も重要と考えます。
お二人とも、「もう少し漢方薬を続けたい」と言って笑顔で外来に来てくれています。
現在は、「様子を見ながら、1日2回を1回に減らし、変わりがなかったら、漢方薬を卒業しましょう」とお伝えしています。
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