月経痛のある女性の66%は、一度も病院へ行っていない

まず、ひとつの数字から始めます。

66%。

これは、月経痛のある日本の女性のうち、これまで一度も医療機関を受診したことがない人の割合です。

「女性の健康の包括的支援政策研究」(厚生労働科学研究費補助金による, 令和5年度)の報告によれば、調査対象となった女性の75%が何らかの月経痛を自覚していました。そして、その月経痛のある女性のうち66%が、医療機関を受診したことがなかった。あわせて、68%の女性が月経前緊張症を自覚していました。

四人に三人が痛みを抱え、そのうち三人に二人が、医療の外側にいる。

なぜ、受診しないのか


ツムラが2024年9月に実施した「第2回 生理・PMSの本音と理解度調査」(全国15〜49歳の月経を経験したことがある6,000人ほか)では、四人に三人(76.2%)が、月経のつらさを我慢しながら日常生活を送っていると報告されています。そして、生理痛やPMSのつらさを人に言いづらい理由として、29.8%が「みんなも我慢しているものだと思うから」と答えました。

若い世代は、さらに受診しません

A県内の高校4校で行われた調査があります。女子高校生とその母親958組に質問紙を配り、611組から回答を得た。そこから、月経痛で婦人科を受診したことのない388を取り出して分析したものです。

その388名のうち86名、22.2%が、月経困難症スコアで3以上、つまり「中等度・重度」に相当する月経痛を自覚していました。決して軽くない痛みを抱えたまま、一度も婦人科の扉を開けていない。

「病院に行くほどのことではない」

この判断を、多くの女性が誰にも相談せずにひとりで下している。それが日本の現状です。

漢方医学は、この痛みをどう扱ってきたか

私は西洋医であり、同時に漢方専門医です。
両方の視点で見ていると、この66%という数字の背景が少し違って見えてきます。

西洋医学は器質的な疾患を見つけることに長けています。子宮内膜症や子宮筋腫があれば、それは治療の対象になる。しかし検査で異常が見つからなければ、機能性の月経痛として、鎮痛薬で対処しながら経過を見る形になりやすい。(最近は低容量ピルの処方も)

このとき患者さんが受け取るメッセージは、しばしばこうです。「異常はありません」。

そして「異常がないなら、我慢するしかない」という結論に、静かに着地してしまう。

漢方医学の枠組みは、ここが違います。検査で異常がなくても、「証」があれば、それは治療の対象です
冷え、月経周期に伴う痛みの性質、痛む場所、経血の状態、これらはすべて診断のための情報であり、治療の入口になります。

痛みがあるという事実そのものが、すでに治療の理由になる。

これは精神論ではなく長い歴史のなかで積み上げられた診断と治療の体系です。
この点については、別の回で詳しくお話しします。

わかっていること/わかっていないこと

この連載では、毎回この項目を置きます。医学は「わかっている」ことと「まだわかっていない」ことを分けて語らなければ、信用を失うものだと考えているからです。

【わかっていること】

  • 日本の女性の約75%が月経痛を自覚し、そのうち約66%は医療機関を受診していない(厚生労働科学研究、令和5年度)
  • 76.2%が月経のつらさを我慢しながら生活している(ツムラ調査、2024年)
  • 婦人科を受診したことのない女子高校生388名のうち86名(22.2%)が、中等度以上の月経痛を自覚していた(外千夏・葛西敦子、学校保健研究 62(5): 314-323, 2020年/A県内の高校4校・2017年調査)

【わかっていないこと】

  • 上記の数値は調査対象や設問の立て方によって幅があり、日本女性全体を代表する確定値ではありません
  • 「なぜ受診しないのか」の心理的・社会的な因果構造は、まだ十分に解明されていません
  • 他国との比較データは、実は驚くほど乏しいのが現状です

今日、できること


晃子先生からの提案、ふたつ

ひとつ─痛みを記録する

痛みの記録をつけてみてください。いつから、どこが、どのように痛むのか。薬を飲んだのか、効いたのか
3周期分(約3ヶ月、月経3回)あれば、それは十分に医学的な情報になります。

ふたつ─「我慢すべきものか」を問い直す

これは我慢すべきものなのか」と、一度だけ問い直してみてください。
答えが出なくてかまいません。問いを立てること自体に意味があります。

痛みは、我慢する強さを測るための試験ではありません。

次回は、この「みんなも我慢している」という思い込みが、なぜ10代でいちばん強いのかという話をします。

参考文献

漢方吉祥

※本記事は一般的な医学情報の提供であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状についてのご相談は医療機関へお願いいたします。

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